門閥を争わせた赤神山の信仰
どんな伝承か
男鹿の前代の歴史は甚だしく埋もれている。この半島の旧姓門閥と称された家々は、早くから利害の衝突を見て互いに相傷つけ、滅び、または衰えてしまった。天然の恩恵にも限りがあって両立して栄えることは難しく、外部勢力の干渉も繁かったであろうが、いま一層根本の原因は、この地に争奪に値する中心の利益があったことで、かつて大いに栄えたがゆえに後に亡びざるを得なかったともいえる。その中心の主要な力の一つは、恐らく赤神山の信仰であった。奥羽の霊山の縁起はほとんど皆慈覚大師を説くけれども、それは概して後世の仮托で、当初は男鹿人の地方神が付近の農村を強く威圧したものかと思われる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。