岬の草生地に群れ咲く野生の蝦夷菊
どんな伝承か
柳田国男は海辺に咲く花の記憶をたぐりながら、男鹿の突角の高地、八戸の背後の山、津軽の十三潟の出口の野で、蝦夷菊が野生しているのを数えきれないほど見たと書いている。花の丈は二三寸から五寸ほどで、淡い草地にこの花だけが踏むほど密に咲いていた。紫はごく淡く、少し離れると葉の色に溶けて見分けがつかなくなる。町では花畑に植えられて大きく育ち、紅白さまざまな変種も生まれたが、同じ名で呼ばれているところを見れば、もとの土地も推し量れるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。