十三の七不思議と覚めた夢
どんな伝承か
十三の湊は千年来の恋の泊りであったが、今や眼前で滅び去ろうとしていると柳田国男は書く。一緒に歩いた遠藤技師の話でも、三四年前には町の両側のどの家からも艶めいた女の声が聞こえ、黄昏前には美しい灯を点じて笑い歌う者が遠い国から何百人となく入り込んでいた。昔から十三の七不思議といって、田は無けれども米が出る、父は無くても子が生れるなどと笑い話の種は多かったが、材木を積む船が青森へ回るようになってからは忽然として覚めた夢になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。