三峰山御犬の祭催促
どんな伝承か
山の神の信仰には、以前は明らかに狼への恐れが含まれていた。狼が群れをなして移動する威力や、その賢さと猛々しさを恐れて、祀れば害を免れるだろうと考え、大口真神の名を与え、さらには人間になぞらえて狼の隠れた子育てを想像した。御犬が子を生むという場所は霊地とされ、その季節には慎んで特に十分な食物を供える風習が各地にあった。武蔵の三峰山では今でもこの時の儀式があり、御犬は夜更けに吠えて祭りの催促を知らせると伝えられている。狼の首領が老女の姿を借りて人間と往来したという話も多く、山姥の子育ての話もそこから類推されたものかもしれないと柳田は述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。