土佐幡多郡のノブスマ
どんな伝承か
土佐の幡多郡で野衾と呼ばれるのは、目の前に壁のように立ちふさがり、上にも下にも左右にも果てが見えないという怪である。腰を下ろして煙草を一服していると消えるという。東京あたりでいう野衾はムササビか蝙蝠のようなもので、ふわりと来て人の目や口を覆うとされる。佐渡ではこれを単にフスマと呼び、夜中に大きな風呂敷のようなものが来て頭を包んでしまう。どんな名刀でも切れないが、一度でもお歯黒を染めた歯で噛めばたやすく切れるといい、そのため昔は男もお歯黒をつけたのだと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。