西播新宮村・七兵衛の呼ばわり
どんな伝承か
『西播怪談実記』に見える話である。揖保郡新宮村の民七兵衛が山へ薪採りに行ったまま還らず、親兄弟が嘆き悲しんでいた。二年を経たある夜、村の後ろの山に来て、七兵衛が戻ったぞと大声に呼ばわる者があった。人々は喜んで近所一同で山へ走ったが、麓に行き着く頃までは声がしたのに、登ってみるともうどこにもいなかった。天狗の下男にでもなったのかと村では話し合っていたが、その後この村から出て久しく江戸にいた者が東海道を帰る途中、興津の宿とかで七兵衛に出逢い、互いに言葉を掛けて別れた。それきり風の便りも無かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。