秩父三峯山の御産の神事
どんな伝承か
秩父の三峯山では今も厳重な作法があり、これを御産の神事と呼ぶという。三峯山誌によれば、御眷属の狼が子を産もうとするときは必ず凄然たる声で鳴き、心の正しい者だけがそれを聞くことができる。聞いた者が社務所に知らせると、神職は潔斎して衣冠を着け、御炊上げと称して小豆飯三升を炊き酒一升を添え、その者を案内に山へ入って探すと、必ず十坪ほどの地面が一本の枯草も無く掃き清めたようになっている場所がある。そこに注連を張り飯と酒を供えて祈祷して帰るのであり、この神事があった年には必ず新たに一万人の信徒が増えると信じられていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。