高鍋領小菅嶽の罠にかかった山女
どんな伝承か
八田知紀の『霧島山幽境真語』の末尾に載る話である。高岡郷の郷士初木新右衛門が語るところでは、高鍋領の小菅嶽という山へ高岡郷から狩りに通う者が、ある日張っておいた罠に怪しいものを掛けた。おおかた人の形で髪は非常に長く、手足は毛に覆われていた。それは、自分はもと人の娘で、数百年昔の乱世に家を出て兄弟とこの山に隠れ、鳥獣や木の実を食べて暮らすうちにこんな姿になった、今夜は妹のもとへ通う途中だったと涙ながらに命乞いをした。言葉は古風で聞き取りにくかったという。男は里へ駆け戻り仲間を集めてその女を殺したが、ほどなく病んで死んだ。近頃の出来事だが男の名は忘れたと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。