霜月祭りで鎮められる遠山一族の怨霊
どんな伝承か
信州下伊那の遠山谷の村々には霜月祭りと呼ばれる祭儀が伝わる。天井にビャッケという天蓋を設けてその下のかまどで湯を立て、その湯で神々や村人、村、遠山谷、ひいては日本じゅうを清める。水王・土王・火王・木王の四面と金王の天伯という五人の王が悪霊を祓い鎮める。祓われるものはその年の疫病や不作に応じて変わるが、かつてこの地を治め村人に惨殺されたという遠山一族の怨霊は、祟りの記憶がよほど生々しかったのか、長くこの祭りと結びつけて語られてきた。祭りは熊野本宮の仙人が旅の途中でこの地に足を止めたのがきっかけで伝わったともいう。
原典より
芸能は神事と芸術とが未分化な状態にあるといわれている。—— 異界巡礼(小松和彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。