絵巻の二人の女官は憑坐か
どんな伝承か
承久本『北野天神縁起』には、菅公の怨霊に苦しむ藤原時平の耳から蛇が顔を出し、浄蔵が必死に祈祷する場面が描かれ、帷に囲われた二人の女官が添えられている。当時の人々は病の原因を生霊や死霊の怨みに求め、正体の定まらない憑依霊を物の怪と呼んだ。密教の加持祈祷では、験僧が病人の体から用意した憑坐の体へ物の怪を駆り移し、憑坐から退散すれば病が癒えるとされた。憑坐は病人の体内にあるものを人に見える状態にする鏡であり、絵の女官はその憑坐用の下級女官と考えられるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。