大ダコが棲むと語られた穴澗洞窟
どんな伝承か
著者が幼い頃の数年を過ごした函館の自宅は外人墓地の近くにあり、そこからさらに南に下ったところに、荒波によって形成されたらしい「穴澗」と呼ばれる洞窟があった。入口には貧弱な吊り橋がかかっており、大人に連れられて何度か渡り、大きな口を開けて渦巻く荒波を呑み込んでいく洞窟の奥を覗き込んだという。土地の子どもたちの間では、穴の奥に大ダコが棲んでいるとか、衣川の戦いに敗れた義経一行が蝦夷の地へ落ちて行く途中で身を潜めた所だとか、放送局の舟が取材に入ったが奥が深すぎて引き返して来たなどと、まことしやかに語られていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。