イザナミを葬った熊野の花の窟
どんな伝承か
『日本書紀』は、亡くなった女神イザナミが熊野の有馬村にある「花の窟」に葬られたと伝える。古代の人びとは洞窟を死者の国や神の国への入口とみなし、葬りの場ともしていたので、イザナミもまた洞窟に葬られたと考えられる。花の窟も黄泉の坂・黄泉の穴とされた場所であった。その一方で、この窟には「産立の窟」という別の名があったともいわれ、神が現れ、死者の霊が生まれ変わって出てくる場所でもあった。洞窟は生と死が重なり合う境の空間だったのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。