掃部長者の女房が化した大蛇
どんな伝承か
陸中国胆沢郡水沢西高山に伝わる話。高山掃部という長者は慈悲深かったが、その女房は情け知らずで使用人を酷使した。ある日さんざん喚き散らした女房が乾いた喉を潤そうと傍らの清水を覗くと、水面には口が耳まで裂け鋭い角を生やした怪物が映り、気づけば総身が蛇体となっていた。大蛇は焔を吹いて邸内を焼き、長者の息の根も止め、止止井の沼に沈んだ。以後は夜な夜な家畜や娘をさらったので、郡司が祈祷師を立てて問うと、我を大明神に祀り毎年八月十五日に眉目美しい娘を供えよという。三年目、肥前松浦から迎えられた小夜姫が法華経を唱えて経典を投げると、大蛇は角を溶かし元の女房の姿に返ったと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が昭和四十一年に著した伝説集である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、東京から九州まで各地に伝わる狐・狸・蛇・河童・天狗・幽霊にまつわる奇談と怪談を、伝えられた形をなるべく崩さずに読み物として書き直している。全四十五話をおおむね東から西へ並べ、多くの話の末に、ゆかりの寺社や旧跡へ行く「順路」を付ける。