信田の森の葛の葉狐と安部保名
どんな伝承か
村上天皇の御代、信田の森の近くに郡司の子安部保名が住んでいた。信田明神へ参詣した日、河内の石川恒平、通称悪右衛門が妻の薬にする若い牝狐の生き肝を求めて狐狩りに来ており、追われた狐が保名のもとへ逃げ込む。渡せ渡さぬの争いの末、保名は捕らえられて首を討たれかけたが、恒平の叔父筋の藤井寺の和尚頼範が通りかかって救った。実はこの和尚は助けた牝狐の化身だった。続いて現れた美女と保名は夫婦になり安部の童子をもうけたが、七年目に狐の姿を子に見られた女は、恋しくばの歌を障子に書き残して森へ去ったという。
原典より
この母こそ、かつて、信田の森で保名に命を助けられた狐が、恩を返すつもりで女に化け、保名につかえていたのであった。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。