応挙が島田宿の旅籠で見た病み女
どんな伝承か
島田市御仮屋の裏手、愛宕権現山の中腹にある白岩寺には、円山応挙が描いたと伝わる幽霊の掛軸が寺宝として残る。若き日の応挙が東海道を下る途中、島田の宿に泊まった初夏の夜更け、厠に立つと、痩せさらばえた女がよろよろと歩く凄惨な姿を目にした。その姿が心に焼きついた応挙は部屋に戻ると絵筆を執り、精魂込めてこの幽霊の姿を描き上げたのだという。
原典より
しばしは動きもやらで、凍りついたようにこの悲愴な姿に魅入っていた応挙は、やがて部屋に戻るとさっそく絵筆をとって、心に焼きついた、患いに疲れた女の姿を精魂こめて描き上げたのである。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。