新場の山でネズミの天ぷらを狐に売った爺さん
どんな伝承か
行徳の萩原とくが語る。威勢のいい爺さんが「自分はねんじゅう狐に化かされているから、ネズミの天ぷらを揚げて新場の山へ行き、ひと儲けしてくる」と言い出した。大八車にモッコと天秤棒を積んで出かけ、夜九時ごろ新場の山で火をどんどん焚いて揚げていると、いい匂いにつられて狐が大勢やって来る。顔を見てはいけないというので、売る側が頬かむりをして相手に見えないようにした。初日は五銭玉がうんと集まったが、二日目は五厘銭や二厘銭ばかり、三日目は葉っぱが多く、袴をはき提灯を提げた狐の親方が「誰に断って境内に出た」と大いに怒ったので、詫びてその場で火を消し、帰って来たという。
原典より
昔、威勢の良いお爺さんがいて、うちへ遊びに来て、「何か金もうけがないかな」って言ってね。—— 市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年))
『市川の伝承民話 第1集』は、市川民話の会が昭和五十五年に編んだ民話の資料集である。市川市教育委員会の事業として昭和五十四年度に千葉県市川市の国分・北国分・行徳・南行徳で行った採訪調査のうち、テープ起こしを終えた語りを、方言も残して話者の息継ぎのままに記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部に分けて地区別に並べ、話末に話者・地区・記録者の名を添える。