浦安帰りに蓑笠の男を追って迷った娘
どんな伝承か
行徳の鈴木かねが語る自身の体験。娘のころ味噌屋に奉公していたが、数えの二十一の六月、初めてひとりで浦安へ大根を売りに行った。行きは新河岸から蒸気船に乗り、帰りは雨のなかを蓑と笠で歩いて戻った。当代島まで来ると、狐がいるといわれる小さな寺のあたりで、自分と同じ蓑笠でかごを担いだ男が前を歩いていた。この人について行けば行徳へ帰れると思ってどこまでもついて行くと、今井まで上がったところで男がいなくなり、方角が分からなくなって相之川の方へ行ってしまった。百姓に尋ねてようやく反対に来たと気づき、土手を戻って行徳へ帰ったが、一時間ほどの道に二、三時間かかったという。
原典より
国分新田(いまの北国分)なんかで、祝いごとに招ばれて、帰りにみやげなんかもらって、いっぱいきげんで練兵場のあたりをふらふら歩いてくると、よく狐に化かされたという話は聞きましたね。—— 市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年))
『市川の伝承民話 第1集』は、市川民話の会が昭和五十五年に編んだ民話の資料集である。市川市教育委員会の事業として昭和五十四年度に千葉県市川市の国分・北国分・行徳・南行徳で行った採訪調査のうち、テープ起こしを終えた語りを、方言も残して話者の息継ぎのままに記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部に分けて地区別に並べ、話末に話者・地区・記録者の名を添える。