父の前借りで三年延びた年季奉公
どんな伝承か
語り手は十五の時から年季奉公に出された。十七、十八、十九と勤め、これで一年半勤めたからやれやれ終わったと思っていると、暮れになって父親がやって来る。大きな艀船が三十五円でできるから四十五円ほど貸してくれるという、五円だけ残しておくからもう一年勤めてくれと言われ、そうして三年も年季を延ばされたという。正月の餅つきのほかは薪も燃やしてはいけないような暮らしだった。今の人はスイッチを入れればまたひと眠りできると嘆き、やれやれと思う頃には体が八十近くになって、踊ろうと思ってももう駄目だと悔しさを語る。
原典より
昔しゃあ、どうしてあんなに働かなくちゃあ金とれなかったかねえ。—— 市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年))
『市川の伝承民話 第1集』は、市川民話の会が昭和五十五年に編んだ民話の資料集である。市川市教育委員会の事業として昭和五十四年度に千葉県市川市の国分・北国分・行徳・南行徳で行った採訪調査のうち、テープ起こしを終えた語りを、方言も残して話者の息継ぎのままに記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部に分けて地区別に並べ、話末に話者・地区・記録者の名を添える。