三人の山伏が囲む犬神払いの祈祷
どんな伝承か
一九六四年の夏、三好郡三加茂町のある祈祷所で、七十一歳の老婆が体の不調をあれこれ訴えると、祈祷師は犬神が憑いたためと見立て、犬神を払う祈祷を始めた。老婆に御幣を持たせて祭壇の前に座らせ、三人の祈祷師が囲んで鉦や太鼓を鳴らし、山伏装束の祈祷師が六尺棒を振り上げて経を読む。火が焚かれ、ほら貝が鳴るうち老婆は震え出し、頭を振って跳ね回り、叫び続けたあげく、ばったり倒れた。その瞬間に犬神が去ったとされ、約三十分の祈祷を終えた老婆は感謝して帰ったと、立ち会ったNHKの青木プロデューサーが伝えている。
原典より
老婆は犬神が落ちたと信じ祈祷師に感謝しつつ帰っていったと、これを見たNHKの青木プロデューサーは報告している。—— 徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究)
『徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)』は、徳島をめぐる研究叢書『徳島の研究』の方言・民俗篇の巻で、阿波の犬神を論じた一篇を収める。狸やトウビョウと並ぶ阿波の憑きものとしての犬神について、起源の伝説、正体とされる小犬や鼠、犬神筋の分布と女系の継承、憑依の動機と症状、祈祷による犬神落しを、筆者の聞き書きと室町期の下知状、郡誌や『阿波民俗』などから述べる。七節に分け、昭和期の犬神をめぐる事件と迷信打破の道で結び、末尾に参考文献の註を掲げる。