酒を吸い込む熊野神社の陰陽石
どんな伝承か
干潟町の松沢にある熊野神社は権現様と呼ばれ、境内に陰石と陽石が並んで立ち、酒飲み石の別名がある。二つの石はどちらも酒を好み、願い事のときに酒を注ぐと、聞き届けてくれる場合はたちまち吸い込んでしまうのでこの名が付いたという。寛永十一年に陰石が府馬へ移されたことがあったが、それからというもの松沢と府馬の間の縁談はことごとく壊れた。天保二年に陰石が松沢の権現様へ戻って二つの石が再び並ぶと、そうした不縁は絶えたと伝えられる。県内には熊野信仰と石神が結びついた例が多い。
原典より
この神社は一般に権現様といわれているが、ここには陰石と陽石が並び立っていて、酒飲み石の別名がある。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。