地頭の娘に恋した若僧の夢
どんな伝承か
『沙石集』に記される熊野信仰の話。上総国高滝(市原市高滝)の地頭が一人娘を連れて熊野に参拝した折、祈禱師の房に泊まると、地頭の娘を見た若い僧が恋をした。地頭の帰国を追って神奈川県六浦港まで来た僧は、船出を待つ間に眠り、夢の中で娘と結ばれ三人の子をもうけ、長男が元服のため鎌倉へ渡る海上で我が子を失ったところで目が覚めた。若僧は人生もまたこの夢と変わらないと悟り、そのまま熊野へ帰って精進し、立派な僧になったという。
原典より
房総の熊野信仰で名高いのは『沙石集』に記されている上総国高滝(市原市高滝)の地頭が、熊野へ参拝したおりのはなしだ。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。