太陽を追い越そうとした韋駄天
どんな伝承か
安房郡富山町には、駆け足の名人の話が伝わっている。若林清の民話百選によれば、むかし韋駄天と呼ばれるほど足に自信のある男がいた。あるとき里人が夕焼けの空を眺めながら、いくら足が速くてもお日さまには追いつけまい、と言った。男はなにくそと西へ向かって走り出す。やがてあたりは真っ暗になったが、なお走り続けて一夜が明けた。朝日が東の空に昇りはじめ、男の影が長く地に伸びる。男は得意げに振り返り、おれの足は速すぎたか、お日さまはまだ後ろにいる、と言ったという。
原典より
房総の笑い話は無限のように伝承されている。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。