道灌に山吹の花をささげる紅皿
どんな伝承か
室町時代の文明のころ、武蔵野に落ちのびて豊島郡高田村に住みついた落武者に、紅皿・欠皿とよばれる姉妹があった。姉の紅皿は器量よしで歌を好んだ。ある日、江戸城から出て高田で狩りをしていた太田道灌が、にわか雨に遭い雨具を借りようと立ち寄ったのがこの家であった。紅皿は庭の山吹を折って差し出した。道灌には意味がわからず城へ帰ったが、家臣の中村治部少輔重頼から、『後拾遺集』の「七重八重花は咲けども山吹のみの一つだに無きぞかなしき」の歌にかけて蓑がないと答えたのだと教えられ、歌の道を知らぬことを恥じて、以後この娘を城に呼んで歌の友としたという。山吹の里は戸塚町一丁目の面影橋の近くだといわれる。
原典より
こっそり武蔵野に逃げのび、豊島郡の高田村に住みついた落武者がいた。—— 新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年))
『新宿と伝説』は、新宿区教育委員会が昭和四十四年に編んだ区内の伝説集である。カッパが出る坂、四谷怪談のお岩、矢来町の化け石、女幽霊が掘った清水など、牛込・四谷・戸塚大久保・新宿・淀橋柏木落合の各地に伝わる六十二の伝説を、江戸の地誌や随筆などから採って収める。第一章で伝説の分布と型を概説し、第二章では地域別に、各話へ場所・時代・出典・解説・参考書を添える。