上総介広常の館
どんな伝承か
布施村の宿は、上総介広常の館があった所だと言われている。山を背にし海を望む一帯に、高く広く諸侯の地と見えるところがあり、古館は今は廃址となって、堀と池の跡を残している。傍らには広常の御手植えと里人が伝える老樹が、梢の半ば腐って枯枝を交え、鹿角の形をなして立つ。庭の跡と称する所には広さ十間余の池があり、庭の池と呼ばれている。館の北には伊勢山、若宮神社、八幡森があり、少し離れて館山と呼ぶ山もある。享保年間、館の堀をさらって田へ泥を運ぶ者があったところ、何かが鍬を断ち、見れば長さ三尺余の白蟹が鋏を挙げて進み寄ってきたので、その人は恐れて逃げ去ったという。『房総志料』はこれを広常の霊であろうとしている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・明治~昭和初期(推定))
藤沢衛彦編『日本伝説叢書 上総の巻』を全218話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。