安然和尚の杖が根づいたさかば桜
どんな伝承か
二宮から一松へ下る坂の上、寺の境内に、さかば櫻という名木がある。言い伝えによれば、この櫻は安然和尚の杖だという。不思議なことに、この櫻は根を上とし梢を下とする逆植えであるという。安然和尚は名僧であったが非常な貧僧で、食物にさえ事を欠くことが度々あったので、隣に安置した大黒天に供物をした。すると大黒天は急に口をきき出し、お前は前の世で善をなさなかったから受くべき福はない、わしの足でもなめたがよい、と言って足を突き出した。怒った安然は、一仏の弟子がたとい飢えたりとて大黒の足など嘗めるものかと、足を出しているうちに杖を噛ませたので、大黒は片足のままになってしまったという。
原典より
二宮から、一松(長生郡)へ下る坂の上が、寺の境内に、さかば櫻と云ふ名木がある。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。