落ち着かぬ人を笑う刑部の日待ち
どんな伝承か
二宮や豊菊のあたりでは、刑部の者が常のように遊んでいるのを「今日は刑部の日待ちだ」と言っている。この地の人は目端が非常に鋭く、何かの事故にも目端目端と言っては仕事を休んだところ、それが習癖になって、つい遊びたくなる。ただ遊びたくなる時にはとかく尻が落ち着かない。「刑部の日待ち」はこうして生まれた俚諺であった。一説には、刑部の祭礼の日は賑やかで野次馬が多いところから出たともいう。ところが同じことを刑部では「高瀧の日待ち」と言う。高瀧の祭礼には神輿が出、時には競馬もあって、見物衆は遠く庁南・茂原・大多喜あたりから集まる。それほど盛大なので刑部の人達も尻をむずむずさせたのであろう。
原典より
二宮、豊菊あたり、刑部の常いのを、『今日は刑部の日待ちだ。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。