坊さんが教えたきさごの数え唄
どんな伝承か
上総の海に産するきさごは粒が大きく色も美しく、これを錦砂子と呼ぶ。きさごを数える遊びには、単なる数の意ばかりでなく恋の呪いも籠められていたという。今も五個ずつなら「ちう、ちろ、たこ、かい、な」、十個ずつなら「は、ま、ぐ、り、は、む、し、の、ど、く」と数える。昔、道心の深い坊さんが宿で隣室の若い娘の艶な音を聞き、思わず前者を心に呟いた。翌朝その娘が自害したと聞き、後者を呟いたという。悟りを得た坊さんは八幡の里で子供らにこの数え方を教えたが、意味は笑って答えなかった。
原典より
上総の海、東上総(房総を呼んでよい名称)の海に産する錦砂子は、つぶが大きく、其色も、美しく、くはっつなどと言って、錦砂子とは言わなかった。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。