雨乞いに霊験ある伊予ヶ岳
どんな伝承か
安房郡平群村大字平久里中に、伊予嶽という形勢のきわめて険しい山がある。高さはおよそ八百尺、平久里天神の社の背後にあたる山である。この山から一つの川が出ており、「安房志」はこれを伊予嶽川と名づけているが、常は水のない川であるという。雨を求める折にこの山へ登り、山上で雨を祈れば霊験があるとされる。絶頂の険しいところへ至るには鉄鎖を伝ってようやく達するという難所であるが、雨を請うには不思議の霊験があると「房総遊覧誌」に伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。