小松原の難の跡に建つ鏡忍寺
どんな伝承か
東条村広場の字小松原にある小松原山鏡忍寺は日蓮宗一致派、身延山久遠寺の末寺で寺格は中本山である。弘安四年三月、日蓮が小松原の難に遭った際に殉じた工藤左近丞吉隆の子日隆が、日蓮の弟子鏡忍坊と父吉隆の死んだ場所に建てたもので、鏡忍坊を一祖、吉隆を二祖、日隆を三祖とする。慶長八年には里見忠義が寄進したと寺伝にいう。吉隆は工藤行光の二男で幼名を一三郎といい、父行光は石橋山の合戦を聞いて参陣する途中、志田ヶ原で俣野景久と出会い、奮戦してこれを討ち取ったと東鑑に見える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。