太田堰に現れた赤い顔のめどち
どんな伝承か
青森県十和田市での話である。三十年ほど前の七月の初め、話者が沢田川、すなわち太田堰のふちを歩いていると、きゃっきゃっと声を上げながら堰をさかのぼってくるものがあった。目を凝らすと、体は黒く顔は赤い、十歳ほどの子どもの背丈で、髪をさらりと垂らしている。めどちだと思った途端、向こうもこちらに気づいたらしく、そのまま水に沈んで消えた。また五月の初め、自分の田で苗を取っていると同じ声がする。見れば太田の水車のわきの、土が崩れた穴に子どもが立っており、顔は猿そっくりであった。田の土にはたびたび足跡が残り、水掻きのあるのがはっきり分かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。