炭焼きに声をかけて消えた釣り人
どんな伝承か
神奈川県津久井郡青野原長野の話。長野の焼山分にもクセ山があり、尾崎さんもそこで炭を焼いたが、怪我はしなかったものの、一度だけ不思議なことがあったという。いつものように炭を焼いていると、下の沢から一人の魚釣りが来て「炭を焼くより木の芽兎を捕ったがええぞ」と声をかけた。鴉が五、六羽、その男のまわりをぐるぐると飛び回っていた。下の源さんかと思って顔を上げ直すと姿が見えない。上も下も見通しの良い場所なのに不思議だと思い、帰りに源さん宅へ寄ると、用事で郡内へ行っているという。天狗の仕業だべということになった。グヒン様にはよく驚かされたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。