ほうき星の夜に北山から石を投げた天狗
どんな伝承か
今から百十年ほど前、和歌山市貴志の地に、たじろうとこまという姉弟とその母親が暮らしていた。ある年ひどい干ばつがあり、母が夜中に田へ水を引きに行くと、梶取の本山から木の本の権現山まで届くほどの大きな彗星が現れ、あたりは真昼のように明るくなった。土下座してうつむいた母がふと顔を上げると、北山に腰かけた大きな赤い顔の天狗がいて、石を投げつけてきた。驚いて家へ逃げ帰ると、裏のもみじの木にその石が落ちていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。