大杉の梢で叫ぶ天狗憑きの若者
どんな伝承か
明治の初め頃、新潟県新発田市八郷町の狢内にある長楽寺に通う農家の若者があった。夏の夜、庭先で夕涼みをしていると急に強い風が吹き抜け、それから様子がおかしくなった。夜中に独り言を言い、誰もいないのに畏まって返事をするようになり、夜な夜な家を抜け出しては明け方に濡れて戻るようになる。ある夜、後をつけた父親が見ると、若者は裏山の谷底の大杉のてっぺんに軽々とよじ登り、両手を広げて叫んでいた。天狗にのりうつられたとして神主が祈祷し、三日三晩の後、若者は正気に戻ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。