墓から亡骸を掘り出し運ぶ狼の夫婦
どんな伝承か
語り手の父が三頭山へ猟に出ていたころの話。数馬の方の女の人があけびを採ろうとして取り損ね、木の間に挟まって死んでいた。二、三日して向こうの者が見つけ、枝ぞりに乗せて山から下ろし、棺に納めて埋め、弔いをすませた。その三日後、父がまたそちらへ猟に行くと、下の方からほい、ほいと掛け声が聞こえる。木に登って見下ろすと、雄と雌の二匹の狼が墓から掘り出した亡骸を前後からくわえ、押しながら引きずってきた。人の匂いに生き返ったかと思ったのか、狼は亡骸をのぞき込んで噛み、それからまた運び去った。子狼に食わせるためだったのだろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。