河内の墓から亡骸を運ぶ狼を見た祖母
どんな伝承か
奥多摩町で聞かれた話。語り手の家の坂本の祖母が、七十年ほど前に出くわしたこと。今はダムの下になってしまった河内へ行く小川橋を渡ると寺があり、その上に墓がたくさんあった。そこで狼が墓を掘り返し、亡骸を担いでいくところを見た。祖母は岩の割れ目に隠れていたが、亡骸に着せた紙がひらひらするのが恐ろしく、震えて草をかさりと鳴らしてしまった。狼は振り向くと亡骸を脇へ下ろし、生き返らぬよう喉にかみついてとどめを刺し、また引いていったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。