ブルドーザーが入った日の猫の会議
どんな伝承か
昭和六一年頃、東京都北区王子の通称チンチン山(旧陸軍銃砲弾運搬軌道)のそばに住む語り手は、庭代わりのその土手に集まる十数匹の野良猫にテレビドラマの主人公や野球選手の名をつけてかわいがっていた。土手が都道補助五六号線になり、初めてブルドーザーが入った日、猫たちは斜面に一斉に集まり、てんでに位置を変えながら一声ずつ鳴いて「会議」を始め、時折室内の語り手の方へ訴えるような目を向けたという。会議は半日ほど続いて解散し、その後、訪れる猫の数は大きく減ったと語られている。文・対馬昇(東京都在住)。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。