善徳寺門前の大入道と大工の手斧
どんな伝承か
徳島県板野郡撫養町南浜の善徳寺の門前あたりには、狸がよく大入道に化けて出るという。ある夕暮れ方、大工職の某という男が仕事帰りに道具箱を担いで通りかかると、見上げるばかりの大入道が門脇の土塀に腰をかけ、こちらを睨んでいた。大工が手斧で大入道の足へ打ち込もうとすると、逆に手斧を奪われ、額へしたたかに打ち込まれた。大工は悲鳴を上げ、道具箱を投げ捨て、傷口を押さえて走り帰り、額を破られたから早く布を出せと騒いだ。家族が手を離させて見ると毛ほどの傷もなく、鏡を見せてようやく納得させたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。