書斎に響く頁をめくる音と顔
どんな伝承か
青森市での話。読書好きだった中年の男性が世を去ってまもなく、その家の書斎から夜ごと本の頁を繰る音が聞こえるようになった。風のない静かな晩ほどはっきり響き、雨戸や窓の鳴る音でもなければ木の葉の落ちる音でもないと家族は言い合った。昭和五二年一〇月一八日の午後一一時、思いきって書斎を撮影すると、入口の壁のあたりに男性の顔が写っていた。その顔は透けていて、背後の壁の模様がうっすら見通せたという。幽霊は半透明のものだという説を裏づける一枚だと紹介されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。