渋谷の邸で開かれた豚天狗の園遊会
どんな伝承か
煙草が官営になったのを機に、天狗煙草で知られた商人が豚の飼育へ転じ、豚天狗を名乗って渋谷の自邸で披露の園遊会を開いた。種豚だけで千頭、豚小屋は区画正しく並び、当日は念入りに掃除もされていたが臭いは強烈で、客はみな一歩たじろいだ。主人は、この匂いが日本中へ行き渡らなければ意味がないと説き、豚は繁殖が早く国益になるから商いをやめて渋谷村の百姓になったのだと語った。料理も豚づくしで、帰りには豚の生肉の折詰が土産に配られた。
原典より
回答者・中村博(東京都在住)。—— 現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。