およね淵と大蛇の求婚
どんな伝承か
敦賀郡中郷村小河口の日吉神社から西へ一町ほど、笙の川の上流に的場と袖河原という地名がある。昔そこに長者が住み、毎日馬を走らせて弓の腕を磨いたので的場と呼ばれた。長者の娘およねが十八の年に川で洗い物をしていると、若い武者がひとり近づいて来て妻にと求めた。実は川に棲む大蛇が化けた姿であったという。およねは父母への形見として片袖を残して淵へ入ったので、その淵をおよね淵と呼び、袖河原の名もここから起こったと伝えられる。
原典より
およねは、ふた親へかたみとするために片袖をのこして、淵に入つたから、その淵をおよね淵といひ、袖河原の地名が起ったと傳へてゐる。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。