屋根屋の身代わりになった真黒の地蔵
どんな伝承か
砂子坂の屋根屋は、毎朝仕事に出る途中で、佐野と上野の分かれ道に立つ地蔵の前を通った。地蔵が雨に打たれ雪まみれになっているのを見ると、そのたびに自分の笠を地蔵の頭に載せていった。やがて屋根屋が死に、皆が集まって悲しんでいると、翌日になって生き返った。驚いてわけを尋ねると、寝ているところへ地蔵が来て、今死ねば地獄に落ちるからもう三年生かしてやる、その間に善い行いをたくさん積めと言われたという。不思議に思って地蔵のもとへ行ってみると、地蔵は屋根屋の身代わりとなって真っ黒になっていた。屋根屋はそこにお堂を建て、地蔵を納めたという。
原典より
不思議に思つて地蔵のところへ行つてみると、屋根屋の身代りになられて、眞黒になつてゐられた。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。