頼朝の隠し目付となった弾左衛門
どんな伝承か
エタの頭弾左衛門は秦氏の一族と伝えられる。天下を統一した源頼朝は猜疑心が強かったが、雑色の弾だけは非常に信用していた。房州で兵をあげたとき江戸重長だけが動こうとしなかったため、頼朝は後に重長を武蔵守に任じざるを得なくなったがどうしても気を許せず、隠し目付という重い苦しい役を弾に言い付けた。弾が賤民に身をやつして江戸へ忍び込んだのにはこうした経緯があったという。ところが頼朝が間もなく死んで事情を知る者がなくなり、弾はそのまま賤民として残らねばならなくなった。江戸時代、弾左衛門の屋敷は新鳥越といわれた浅草亀岡町にあり、六十戸数百人を従えて豪奢に暮し、正月には江戸城の参賀も許された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸動物民話物語(窪田明治)
『江戸動物民話物語』は、「郷土史・東京」の刊行会を主宰した窪田明治が、東京の郷土史を調べた材料から江戸の民話を選んでまとめた本である。狐や狸、猫、蛇が人を化かし、恩を返し、祟る話を中心に、本郷・王子・向島・麻布・三田など東京各地に伝わる話を収める。狐・狸・猫・蛇・不思議な生き物の五部に分け、一話ごとに舞台となった土地の史跡や寺社の由来、沿革の解説を添え、まえがきとあとがきを付す。