血を流したこぶ楢と伐り倒した男の最期
どんな伝承か
岐阜県吉城郡では、木の伐採の時でも決して伐ってはならないとされる木があった。枝と枝が交差してくっつき、幹に窓ができた窓木は神の宿る木として恐れられ、一株から五本以上の幹が立つ木、樹齢何百年もの残し木、神社や仏閣の木も同様であった。名を付けられた木も伐採を免れ、当地では門栃・こぶ楢・ねじ栗などがあった。昭和二年の冬、宇津江在住の北村三郎の祖父がこぶ楢を伐り倒した話は有名である。幹に斧を打ち込むと切り口から血が流れ出たが、かまわず伐り倒して炭窯に入れた。普通は半日で点く火が七日七夜かかってやっと点いたという。その人は他人の言うことに耳をかさぬ人で、のちに木に打たれて死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。