松を伐った時刻に死んだ住職
どんな伝承か
近江一一番、伊香三三番の札所である石道寺は、一二五〇年昔に延法上人が開き、行基や伝教大師がおこした寺である。山門の仁王は明治二七年に焼失したが、山門の松は残り、伊香郡の銘木指定を受けることになっていた。ところが左手の枝が枯れかかり、石道の区民が総出で一斗余りの酒を根のまわりにまき、藁を巻いたりしたが、しだいに枯れていった。そこで業者と交渉し、平成元年三月一七日に左手の松を伐ることになり、村民が多数見学に集った。雪が降ってきた。入院していた石道の空観寺の住職が午後一二時五五分に死去したという報を、松が切り倒された頃に聞いたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。