森は海の恋人と唱えて木を植える漁民
どんな伝承か
海辺で牡蠣を養殖する人たちが山に木を植えはじめた。牡蠣の餌は植物プランクトンで、その発生に必要な鉄分やマグネシウムは広葉樹の腐葉土の中にあり、それが水に溶けて海に流れこむのだという。光合成をおこなう植物プランクトンは牡蠣を育てるだけでなく、海水に溶けこんだ炭酸ガスを酸素に変えて海をきれいにする。木が伐られて海が濁り、牡蠣の養殖が思わしくなくなったとき、漁民たちは山へ登って広葉樹を植えはじめたのだという。平成四年のことである。木を植える漁民は自ら「牡蠣の森を慕う会」と名づけ、「森は海の恋人」だと言っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。