杉に奪われた紅葉と雑木の行灯
どんな伝承か
富山県の利賀村のA君は、京都の大学を卒業し、村の役場に勤めるために一年ぶりに帰村した。山も川も生活も変わっていないのに、村の秋の紅葉は昔ほど美しくない。道はコンクリートで舗装され、雨が降ると山の上の方から水が滝のように流れる。営林署に勤める人は、雑木を切り倒して金になる杉を植えた結果、根は張らず光も入らず、土が死んでしまったのだと教えた。やがてA君をかわいがってくれた祖母が死に、簞笥からは祖母が自分で作っていた和紙が沢山見つかった。A君は山の雑木を切って昔あった行灯をつくり、その和紙を張って祖母を偲び、多くの人に配った。それは村の民芸品になっていった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。