沼の主が化けた小学校の先生
どんな伝承か
産婆のいない頃、取り上げをしていたオタケという婆さんが、隣村で父無し子の出産に呼ばれた。ところが生まれたのは耳まで口の裂けた大蛇だったという。明治の中頃のことか。娘はなら山という村の者で、奥川のずっと山の方の二軒家に住み、毎朝、葦の茂る沼へ馬草を刈りに通っていた。そこで会う小学校の先生に心を寄せていたが、相手は先生ではなく沼に棲む主の大蛇で、娘の心を見抜いて化けていたのだった。暗いうちに来いと言われるまま通ううちに身ごもり、三日三晩の難産の末に、口を開けて人に襲いかかる子が生まれた。叩いても死なず、以後は毎晩、産婦の寝るあたりの壁が光った。最後は巫女に拝んでもらってようやく収まったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。