目名の若者に鼻を削がれた十王尊
どんな伝承か
恐山の地蔵堂には、慈覚大師が刻んだと伝わる十王尊がある。戦前までは案内の小僧が、この十王様は昔近くの目名村の杣たちに顔を削られたので、その村の杣は今もこの辺りで山仕事ができない、と参詣者に口上を述べたという。言い伝えでは、昔、東通村目名の若者たちがこの近くで山仕事をしていて、毎日道具を背負って往復するのを面倒がり、十人で杣道具をひとつずつ十王様に預けて村へ帰った。翌朝来ると道具は残らず盗まれていたので、頼みがいがないと怒り、鉈で十王様の鼻を削いだ。以来鼻は欠けたままで、十王尊は目名の者が恐山へ来ると大雨を降らせ、その足跡を洗い流すという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。