新渡戸稲造を迎えた尼の予感
どんな伝承か
昭和二年十月、東北へ講演旅行に出た新渡戸稲造は、山形県赤湯町に霊感が強く予言する尼がいると聞いて訪ねた。赤湯町長岡の寺に住む佐藤法亮尼、当時二十七歳である。法亮尼はその朝、東から水戸黄門のような人が来るという予感を得ていた。本堂での祈祷を終えて振り返ると、田舎には珍しい上品な老人が立っていた。新渡戸は住所不定の名無しの権兵衛としておいてくださいと名を明かさず、仏はどこにおわすのかと問うた。やがて彼は、日本が軍人に支配され戦争へ向かうことへの憂いを語る。法亮尼は目を閉じ、波のうねりと変わる海の色を感じ、人を救うのは人しかないと告げた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。