境界争いに負けたM夫人のサバリ
どんな伝承か
島根県T部落の、持筋の家の未亡人M夫人は、土地が隣り合うA家と、そちらがうちの土地に食い込んでいると耕地の境をめぐって言い争った。部落の中で測量士の免許を持つ人が測ると、食い込んでいたのはM家の方だったが、A家はサバリを恐れて境まで田を広げなかった。その後、A家の二十八歳の嫁が足腰を痛めてオガミテに見てもらうと、境界争いに負けたのを恨むM夫人が憑いていると言われた。噂がM夫人の耳に入って両家はまた喧嘩となり、一九六六年ごろの出来事として近所に知れ渡った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。